「はじめて経審を受けるが、売上が高くないので、思うような点数が取れないかも・・・」
「継続して経審を受けているが、なかなか点数が上がらない・・・」
経審はその全体像や点数算出の仕組みについてある程度の理解がなければ、漠然とした不安や悩みがつきません。
本記事では、経審の点数改善で絶対に取り組むべき評価カテゴリー「W(社会性等)」に焦点をあて、詳しく解説しています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
基本的なことから確認したい方は、以下のリンク記事を先にご確認ください。
▼目次
3.最後に
経営事項審査(経審)における「W(社会性等)」の位置付け
経審の点数は、5つの評価カテゴリーで構成されています。
5つのうち、2つは業種別の評価で残り3つは会社(事業者)全体の評価です。
【 Z 】技術力 (業種別) 【X1 】完成工事高 (業種別) 【X2 】自己資本・利益額 (全体) 【 Y 】経営状況分析 (全体) 【 W 】社会性等 (全体) |
以下のようにそれぞれに係数をかけ、足し合わせた数値が経審の点数(総合評定値P点)と言われるものです。
総合評定値P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15 |
上図からもわかるように「X2(自己資本額・利益額)」、「Y(経営状況分析)」、「W(社会性等)」は、総合評定値P点の土台となるので、積極的に取り組むべき評価カテゴリーです。
中でも「W(社会性等)」は手をつけやすく、点数改善が見込める評価カテゴリーと言えます。
「W(社会性等)」は8つ項目で構成されている
「W点(社会性等)」はW1~W8までの8項目について評価されます。
W1 建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組みの状況 ▲120~77点 W2 建設業の営業継続の状況 ▲60~60点 W3 防災活動への貢献の状況 0点 or 20点 W4 法令遵守の状況 ▲30点~0点 W5 建設業の経理の状況 0点~30点 W6 研究開発の状況 0点~25点 W7 建設機械の保有状況 0点~15点 W8 国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況 0点~10点 |
以下の計算式で算出されます。
会社の規模に関係なく点数化できる項目が多いのが特徴です。
(W1+W2+W3+W4+W5+W6+W7+W8)×10×175/200=W(▲1837~2073点) |
●建設工事の担い手の育成及び確保に関する取り組みの状況(W1)
人材育成・確保に向けて労働環境の整備を行っているかどうかが評価のポイントとなります。
W1-1~W1-3 雇用保険、健康保険、厚生年金保険に未加入の場合は減点(1つにつき▲40点)
W1-4~W1-6 建退共、退職一時金・企業年金、法定外労災制度に加入・対応で加点(1つにつき+15点)
W1-7 若年の技術者及び技能労働者の育成・確保の取り組みによって加点されます。
W1-8 技術者のCPD単位取得や技能者のCCUS技能レベル向上の取り組みによって加点されます。
W1-9 えるぼし認定やくるみん認定、ユースエール認定といったワークライフバランス改善の取り組みで加点
W-1-10 元請を対象にCCUSによる就業履歴蓄積に必要な処置が実施できていれば加点されます。
●建設業の営業継続の状況(W2)
建設業許可を受けてから経過した年数が、営業年数として評価されます。
休業期間は計算には入りません。
(営業年数-5(年))×2=評価点 |
60点が最高点(営業年数35年上限)になります。
営業年数が35年以上あっても60点を超えることはありません。
営業年数が5年以下の場合は0点となります。6年以上なければ点数がつきません。
なお、民事再生法または会社更生法の適用があった場合は▲60点の減点となります。
●防災活動への貢献の状況 (W3)
国や独立行政法人、地方自治体と直接防災協定を結んでいる場合又は加入している団体が防災協定を結んでいる場合は20点加点されます。
●法令遵守の状況 (W4)
審査期間内に行政庁から営業停止処分や指示処分を受けた場合は減点されます。
指示処分 ▲15点 営業停止処分 ▲30点 |
●建設業の経理の状況 (W5)
経理の信頼性の向上に取り組んでいると加点されます。
・監査の受審状況
会計監査人の設置 +20点 会計参与の設置 +10点 経理処理の適正を確認した旨の書類提出 +2点 (社内の経理実務責任者(公認会計士、税理士、登録1級建設業経理士、1級建設業経理士合格者)自主監査) 無 0点 |
・公認会計士等の数
公認会計士等の数×1+登録経理士講習実施機関に登録された2級建設業経理士の数×0.4 |
●研究開発の状況 (W6)
研究開発費の金額が評価対象になります。
会計監査人設置会社である必要があるので、対象となるケースは少ないかもしれません。
●建設機械の保有状況 (W7)
災害時の備えとして建設機械の保有状況が評価されます。
特定自主検査等を受けていることが条件になります。
審査基準日以降1年7ヶ月以上契約が残っているリース契約による機械も対象となります。
ショベル系掘削機 ブルドーザー(3トン以上のもの) トラクターショベル(バケット容量0.4㎥以上のもの) モーターグレーダー(5トン以上のもの) ダンプ車(土砂禁止は対象外) 移動式クレーン(つり上げ荷重3トン以上のもの) 締固め機械 解体用機械 高所作業車(高さ2m以上のもの) |
1台保有で5点加算、以降1台増えるごとに1点加算、上限は15点となります。
15台以上保有していても15点となります。
●国又は国際標準化機構が定めた規格による認証又は登録の状況(W8)
ISO認証の取得で加点されます。
ISO9001(品質マネジメントシステム) +5点 ISO14001(環境マネジメントシステム) +5点 エコアクション21 +3点 |
ISO14001とエコアクション21は重複して加算されません。最高で10点加算されます。
最後に
「W(社会性)」は業種ごとではなく全体に関わる評価カテゴリーなので、その重要性は言うまでもありません。
構成している8項目には、会社規模の大小に関わらず、すぐに取り組むことができるものが多く含まれています。
経審の点数改善において優先すべき評価カテゴリーと言えるでしょう。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、 建設キャリアアップシステムをサポート。 |
当事務所では、大阪府知事の建設業許可を中心に申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。建設キャリアアップシステムについても代行申請を全国対応で承っております。
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