建設業許可を取得した後、経営業務の管理責任者の交替や役員の就任退任、資本金の変更等、定められた事項に変更があった場合は期限通りに届出をしなければなりません。
廃業届は、それらの変更届と並び許可業者に義務付けられた届出の1つです。
廃業と聞くと、倒産などで事業自体をやめることを真っ先にイメージすると思いますが、あくまでも建設業許可の廃業という意味で、与えられた許可を返納する届出のことです。
許可を返納した後も事業は続けるということは十分にありえます。
本記事では具体的な廃業パターン、届出の方法、書類の書き方等を詳しく解説しています。
ぜひご参考にしてください。
▼目次
(2)全部廃業する場合
5.最後に
建設業許可の廃業とは
許可の要件を満たさなくなった場合だけでなく、個人事業主の死亡や法人の合併による消滅、法人の解散等によって事業自体を継続できない場合も許可を廃業しなければなりません。
会社法上の廃業手続きを済ませても許可行政庁には許可業者として登録が残ったままになるのです。
廃業届の提出期限は30日以内です。
廃業届が受理されると許可満了日を待たずに許可が取り消されます。違法行為等によるペナルティとしての許可取り消しとは性質が違います。
許可の廃業には全部廃業、一部廃業という考え方がある
法人が解散等で消滅する場合は、もう事業を続けることはないので、持っている許可すべてを返納することになります(全部廃業)。
経営業務の管理責任者が急な退職等で欠けて、代わりがいない場合も許可を維持することができないので、全部廃業しなければなりません。
一方、専任技術者が退職し、一部の業種について代わりの専任技術者がいない場合、その業種のみの許可を返納することを一部廃業と言います。残りの業種については専任技術者がいて、許可を維持できる状態にあるということです。
廃業届の書き方、届出の方法
他の届出と違い、廃業届は廃業の理由によって、届出者が異なります。
また、全部廃業と一部廃業では提出すべき書類が異なり、一部廃業の方は少しわかりづらく、間違いやすいので注意しましょう。
◎届出事由によって届出者が変わる
届出事由 | 届出者 | 確認書類 |
許可を受けた個人事業主が死亡したとき | 相続人 | 戸籍抄本 |
法人が合併により消滅したとき | 解散時に役員であった者 | 解散時の商業登記簿謄本 |
法人が破産手続開始決定により解散したとき | 破産管財人 | 印鑑証明書等 |
法人が合併又は破産手続開始決定以外の事由により解散したとき | 清算人 | 商業登記簿謄本 |
許可を受けた建設業を廃止したとき | 申請者 | 本人確認書類 |
◎全部廃業する場合
全部廃業する場合は廃業届(様式第22号の4)を提出します。
届出する際には、上記のとおり届出者の確認書類が必要になります。
【廃業届(様式第22号の4)】
◎一部廃業の場合は専任技術者の変更に関する書類も必要
一部廃業する場合は専任技術者の削除を伴う場合も多いので、廃業届に加えて他書類も必要になります。
廃業届(様式第22号の4)+変更届出書(様式第22号の2)第一面+届出書(様式第22号の3)+専任技術者一覧表(様式第1号別紙4)
【廃業届(様式第22号の4)】
【変更届出書(様式第22号の2)第一面】
【届出書(様式第22号の3)】
【専任技術者一覧表(様式第1号別紙4)】
一部廃業に伴って専任技術者を削除した後、誰が残りの許可業種を担当することになるのかをわかるようにします。
廃業する業種を担当していた専任技術者が他業種を引き続き担当する場合や後任に交代した上で一部廃業する場合は、届出書(第22号の3)に代えて、専任技術者証明書(様式第8号)を提出することになります。
別途、専任技術者の要件を満たしていることを証明する確認書類が必要です。
専任技術者一覧表(様式第1号別紙4)については以下リンクの別記事で詳しく解説しています。
専任技術者証明書(様式第8号)については以下リンクの別記事で詳しく解説しています。
廃業届の未提出による弊害
廃業届も建設業許可業者に課せられた義務なので、届出を怠ると罰則があります。
届出を怠ったことへの罰則そのものよりも届出しないことによって発生する問題の方が深刻です。
◎会社をたたんで廃業届を未提出
建設業許可は更新せずに放っておくと、許可満了日を過ぎた後に抹消されます。
いずれ抹消されるからと会社をたたむ際に届出をせずにそのまま放置するケースがたまに見られます。
抹消されると、許可業者として活動してきた実績がなかったことにされるので注意が必要です。
本来、許可通知書や謄本、申請書副本等があれば、簡単に経営経験を証明できたところ、抹消されたことによってそれができなくなります。
◎専任技術者、経営業務の管理責任者が欠けたのに廃業届を未提出
専任技術者や経営業務の管理責任者が欠けた時点で、建設業許可の要件を満たしていないことになります。
無許可で営業していることになるので、もし500万円以上の工事を請け負っていたりした場合には重大な建設業法違反になります。
代わりの者が見つかるまでだまってやり過ごそうとしても絶対にバレるので、正直に廃業届を提出しましょう。
最後に
廃業届は他の変更届と違ってあまり馴染みのない届出かもしれません。
しかし、どんな時に廃業届が必要になるのか、怠った場合にどんなことが起こるのかといった根本的なことはしっかり把握しておきたいところです。
また、会社の解散等はやむを得ないですが、経営業務の管理責任者や専任技術者が欠けることに関しては、日頃から社内体制に目を向けリスクヘッジしておいた方が良いでしょう。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。 ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。
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