
建設業許可を申請する際には、一般建設業許可・特定建設業許可、大臣許可・知事許可といった許可区分を選択するとともに許可を受けたい業種を選択しなければなりません。
建設業法で全29業種が定められていて、業種ごとに請け負える工事の内容が厳密に決められています。
自社が請け負っているまたは今後請け負う予定の工事に応じて業種を正しく選択しなければ、許可取得後に希望の工事を請け負えないということもありえますので注意しましょう。
この記事を読めば、建設業許可の申請を行う際に業種を正しく選択できるようになります。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
4.最後に
建設業法上の建設業の業種とは
リフォーム工事はどの業種に該当するのか、下水道配管工事は土木一式工事と管工事どちらに該当するのか等、日常的に耳にする工事種別がどの業種に含まれるのかの判断が難しいことがあります。
建設業許可における業種の区別、考え方を理解し、許可申請の際に間違わないように注意しましょう。
■ 2種類の一式工事、27種類の専門工事
■ 業種ごとに建設業許可が必要
■ 最近の業種別の許可取得業者数の傾向
◎2種類の一式工事、27種類の専門工事
土木工事業、建築工事業の2業種は一式工事を請け負うことができます。
一式工事とは総合的に専門業者等をマネジメントして土木工作物や建築物を建設する工事のことで、いわゆるゼネコンが行うような工事を指します。
一式工事という名称からどんな工事でもカバーできる網羅的な業種と勘違いされるが多いのですが、土木工事業や建築工事業の許可があるからといって請負金額500万円以上の他専門工事を単体で請け負うことはできません。
専門工事は全部で27業種あります。建設業許可における業種をまとめると以下の通りになります。
建設工事の 種類 | 内容 | 具体例 |
土木一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 | 橋梁工事、道路工事、トンネル工事等 ※原則、元請の立場で請け負う一式工事 ※橋梁等の土木工作物を総合的に建設するPC工事は土木一式工事に該当 |
建築一式工事 | 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 | 戸建て、ビル、商業施設等の新築工事。建築確認が必要な増改築工事等。 ※原則、元請の立場で請け負う一式工事 |
大工工事 | 木材の加工又は取り付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 | 大工工事、造作工事、型枠工事 |
左官工事 | 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又は張り付ける工事 | 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事 |
とび・土工・コンクリート工事 | ①足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事 ②くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事 ③土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事 ④コンクリートにより工作物を築造する工事 ⑤その他基礎的ないしは準備的工事 | ①とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロック据付工事 ②くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事 ③土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事 ④コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事 ⑤地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事 |
石工事 | 石材の加工又は積方により工作物を築造し、又は工作物に石材を取付ける工事 | 石積み(張り)工事、コンクリートブロック積み(張り)工事 |
屋根工事 | 瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事 | 屋根ふき工事 |
電気工事 | 発電設備、変電設備、送配電設備、構内電気設備等を設置する工事 | 発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事 |
管工事 | 冷暖房、冷凍冷蔵、空調調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を配置する工事 | 冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空調設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更正工事 |
タイル・れんが・ブロック工事 | れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又は張り付ける工事 | コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事 |
鋼構造物工事 | 形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事 | 鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油・ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事 |
鉄筋工事 | 棒鋼等の鋼材を加工し、接合し、又は組み立てる工事 | 鉄筋加工組立て工事、鉄筋継手工事 |
舗装工事 | 道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事 | アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事 |
しゅんせつ工事 | 河川、港湾等の水底をしゅんせつする工事 | しゅんせつ工事 |
板金工事 | 金属薄板等を加工して工作物に取付け、又は工作物に金属製等の付属物を取付ける工事 | 板金加工取付け工事、建築板金工事 |
ガラス工事 | 工作物にガラスを加工して取付ける工事 | ガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事 |
塗装工事 | 塗料、塗材等を工作物に吹付け、塗付け、又ははりつける工事 | 塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事 |
防水工事 | アスファルト、モルタル、シーリング材等によって防水を行う工事 | アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事 |
内装仕上工事 | 木材、石膏ボード、吸音板、壁紙、たたみ、ビニール床タイル、カーペット、ふすま等を用いて建築物の内装仕上げを行う工事 | インテリア工事、天井仕上げ工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事 |
機械器具設置工事 | 機械器具の組立て等により工作物を建設し、又は工作物に機械器具を取付ける工事 | プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排水機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事 |
熱絶縁工事 | 工作物又は工作物の設備を熱絶縁する工事 | 冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事、ウレタン吹付け断熱工事 |
電気通信工事 | 有線電気通信設備、無線電気通信設備、ネットワーク設備、情報設備、放送機械設備等の電気通信設備を設置する工事 | 有線電気通信設備工事、無線電気通信設備工事、データ通信設備工事、情報処理設備工事、情報収集設備工事、情報表示設備工事、放送機械設備工事、TV電波障害防除設備工事 |
造園工事 | 整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 | 植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事、屋上等緑化工事、緑地育成工事 |
さく井工事 | さく井機械等を用いてさく孔、さく井を行う工事又はこれらの工事に伴う揚水設備設置等を行う工事 | さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事 |
建具工事 | 工作物に木製又は金属製の建具等を取付ける工事 | 金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドア取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事 |
水道施設工事 | 上水道、工業用水道等のための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事又は公共下水道若しくは流域下水道の処理設備を設置する工事 | 取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事 |
消防施設工事 | 火災警報設備、消火設備、避難設備若しくは消火活動に必要な設備を設置し、又は工作物に取付ける工事 | 屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事 |
清掃施設工事 | し尿処理施設又はごみ処理施設を設置する工事 | ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事 |
解体工事 | 工作物の解体を行う工事 | 工作物解体工事 |
◎業種ごとに建設業許可が必要
業種ごとに建設業許可を受けなければ、その業種の請負金額500万円以上の工事を請け負うことができません。
例外として、附帯工事であればその業種の許可がなくても請け負うことができます。
附帯工事については、建設業許可事務ガイドラインで以下のように示されています。
【建設業許可事務ガイドライン(国土交通省HPより引用)】
“建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事のほか、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(以下「附帯工事」という。)をも請け負うことができるが、この附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいう。附帯工事の具体的な判断に当たっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等に当たり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討する。”
具体例として、内装仕上工事におけるサッシ取付け等の建具工事、塗装工事におけるクラック補修等の防水工事、外壁防水工事のために必要な足場工事等があります。
要するにメインの工事施工に伴うサブ的な工事またはメインの工事施工のために必要な工事のことです。
ただし、メインの工事と全く関連性のない工事やメインの工事より請負金額が大きい工事等は附帯工事として認められません。何でも附帯工事にできるわけではありません。
また附帯工事を自社施工する場合は、その業種の許可自体は不要でも現場配置技術者(主任技術者・監理技術者)の配置が必要になるので注意しましょう。
附帯工事についてさらに詳しく知りたい方は以下のリンク記事をあわせてご確認ください。
✔あわせてチェック 【許可業者必見】附帯工事とは|その業種、建設業許可なしで請け負えるかも |
◎最近の業種別の許可取得業者数の傾向
以前は1業種のみ許可を取得している業者の方が多かったのですが、最近は複数業種を取得している業者の方が多くなっています。事業の拡大・安定を目指して総合化や多能工化が進んでいるのかもしれません。
2024年3月時点で、許可を取得している業者が1番多い業種は、「とび・土工工事業」(181,234業者)で「建築工事業」(144,239業者)、「土木工事業」(131,523業者)と続きます。
建設業界において特に必要とされる場面が多い業種なので許可取得業者数が多くなっています。
一方で「電気通信工事業」(16,299業者)、「電気工事業」(64,237業者)などは需要・市場規模に対して許可取得業者数は少ない状況です。
どの業種の許可を取得できるかは営業所技術者等(専任技術者)の資格や経験で決まる
建設業許可は要件を満たしてさえいれば、一度の申請で何業種でも許可を取得することができます。
ただし、どの業種の許可を取得できるかは技術力(=営業所技術者等(専任技術者))で決まります。
他の許可要件を満たした上で、取得したい業種に応じた国家資格等を保有する営業所技術者等(専任技術者)か、取得したい業種についての実務経験がある営業所技術者等(専任技術者)を配置すれば、その業種の許可を取得することができます。
◎資格ごとに対応している業種を同時に許可取得できる
例えば「1級土木施工管理技士」の資格を保有する人を営業所技術者等(専任技術者)として配置すれば、「土木工事業」「とび・土工工事業」「石工事業」「鋼構造物工事業」「舗装工事業」「しゅんせつ工事業」「塗装工事業」「水道施設工事業」「解体工事業」の9業種の許可を取得することが可能です。
1人の営業所技術者等(専任技術者)を配置することで最大9業種同時に許可を取得することができるのです。
営業所技術者等(専任技術者)になり得る国家資格等について詳しく知りたい方は、以下のリンク記事もあわせてご確認ください。
✔あわせてチェック 建設業許可に必要な資格とは?営業所技術者等(専任技術者)の要件解説 |
◎業種ごとの実務経験があれば許可を取得できる
資格がない場合、許可を取得したい業種について10年以上の実務経験(指定学科卒業で短縮可能)がある人を営業所技術者等(専任技術者)として配置することでも、その業種の許可を取得することはできます。
ただし、実務経験は同一期間に2業種以上認められないという点に注意が必要です。
例えば、10年間、とび・土工工事と解体工事に従事していたとしてもどちらか一方の経験しか認められないということです。
2業種の営業所技術者等(専任技術者)とするには2業種それぞれ10年の実務経験、合計20年間の実務経験が必要になります。
※「消防施設工事業」は実務経験で専任技術者になることができません。
※「電気工事業」において資格なしの実務経験は経験として原則認められません。
業種を選択する時に意識すべきこと
許可を申請する際には正しい業種を選択するよう注意しなければならないのは言うまでもありません。
あわせて許可取得後に起こり得ることも意識しておきましょう。
●業種を追加する場合は申請手数料が必要になる
許可申請の際に同時に何業種申請しても申請手数料は1回分で済みますが、あとから追加するとあらためて申請手数料が必要になります。
許可取得できる業種は、可能な限り同時に申請しておく方が良いでしょう。
●業種を追加すると既存の業種と更新時期がズレる
業種追加で許可を取得すると、すでに取得している業種と許可取得日が異なるので、更新時期もズレてきます。
管理が面倒かつ申請手数料も更新の都度必要になるので、できれば避けたいところです。
しかし、やむなく許可取得後に業種を追加することも当然に起こりえます。
その場合は、許可の一本化を行うようにしましょう。
●許可業種分すべての工事経歴書の提出が必要になる
許可業種が複数になり、それぞれ工事実績がそれなりにあると工事経歴書を作成するのも大変です。
工事経歴書は工事実績がない業種分も提出が必要です。
最後に
以上、建設業許可の種類(業種)について解説いたしました。
業種判断は非常に難しく、判断に迷うことが多々あります。
現在の29業種で実際の工種を厳密に区別することはやや無理があるのかもしれません。
最終的な判断は許可行政庁に確認する方が良いでしょう。
![]() | この記事の執筆者 逸見 龍二(へんみ りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 事務所HPへ |
当事務所では建設業許可の申請代理、その他経営事項審査や入札参加資格申請までサポート全般を承っております。
大阪市鶴見区・城東区・都島区・旭区を中心に大阪府全域、奈良県、兵庫県、和歌山県は標準対応エリアです。
迅速にご対応いたします。その他地域の方もお気軽にご相談ください。
ご相談はお問合せフォームからお願いいたします。
Kommentare