建設業許可の要件の中に「営業所を有すること」が定められています。
建設業の営業を行う事務所が実在することを求められているのです。
ペーパーカンパニーのような不良・不適格事業者を排除するためにある要件だと言っても過言ではありません。
常勤役員等(経営業務の管理責任者)の要件でもペーパーカンパニー排除の効果は十分に見られると思いますが、都道府県によっては許可申請時に事務所の現地調査まで行われます。
許可申請時に現地調査まで行わない都道府県でも、公共工事を落札した場合には現地調査を行うということもあります。疑われるようなことがないよう許可申請時には建設業法に定められているとおりに準備しておきましょう。
この記事では、建設業許可における営業所要件について解説しています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
(1)営業所の定義
(1)営業所に必要な設備等
(2)必要書類
4.最後に
営業所とは?建設業許可における営業所の定義
建設業許可における営業所について3つの視点で説明します。
■ 営業所の定義
■ 主たる営業所と従たる営業所
■ 営業所をどこに設置するかで許可の区分が変わる
一般的に営業所と聞くと、なんとなくのイメージは浮かぶと思います。しかし、ここで言う建設業の営業所とはどんな所で何をする所なのでしょうか。まずは定義を正しく理解しておきましょう。
◎営業所の定義
建設業許可の営業所とは、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインに次のように定められています。
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行う等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行う事務所をいい、契約書の名義人が当該事務所を代表する者であるか否かを問わない。
以下のような場所は建設業許可の営業所に該当しません。
・請負契約締結に関する業務を行うことが想定されない資材置き場、作業場、工事事務所など
・登記上の本社・本店ではあるが、経理業務などを行うだけの事務所など
・支店の1つであるが、兼業の不動産仲介のみを行う事務所など
(注意点)
✅請負契約の締結業務を行っていなくても、契約に関する指示を出している事務所は営業所に該当します。
✅請負契約の締結を行わず、見積りのみ行う場合でも営業所に該当します。
✅契約名義は支店等の代表者ではなく、本社の代表者であることが一般的ですが、実態として請負契約を締結する権限があるのであれば、営業所に該当します。
◎主たる営業所と従たる営業所
建設業許可の営業所には主たる営業所と従たる営業所があります。いわゆる本店と支店と考えて問題ありません。
建設業許可を受けるには、主たる営業所を必ず設置しなければなりません。
営業所を複数箇所展開する場合は、主たる営業所以外がすべて従たる営業所になります。この場合、主たる営業所が全体の統括をすることになります。営業所を一箇所しか設置していない場合は、その営業所が主たる営業所です。
営業所を追加するには「変更届」が必要になります。
◎営業所をどこに設置するかで許可の区分が変わる
建設業許可の申請において営業所を複数設置する場合は、許可の区分に注意する必要があります。
具体的には以下のとおりです。
・同じ都道府県内のみに営業所がある場合・・・都道府県知事許可
・2つ以上の都道府県に営業所がある場合・・・国土交通大臣許可
都道府県知事許可を受けている建設業者が他の都道府県に営業所を追加する場合は、許可の区分が変わるので「変更届」ではなく、「許可換え新規」という申請をしなければなりません。
営業所要件を満たすには何が必要なのか
建設業の営業所として、建設工事の請負契約締結に関する業務を行うにあたり、どのような事務所でなければならないのでしょうか。なんでも良いというわけではありません。
建物や設備といったハード面と人の配置といったソフト面の両面で要件が定められています。
それぞれ内容を確認しておきましょう。
◎営業所に必要な設備等
建設業の営業所として認められるには、原則として以下のすべてを満たしている必要があります。
✅事務所スペースとして常時使用する権限を有していること
✅固定電話、事務備品・機器、応接セット等を備えていること
✅建物の外観または入口で商号等が確認できること
✅許可を受けている場合は許可票を掲示していること
※自宅を営業所とする場合は、住居スペースとは分けられた独立したスペースを確保し、電話番号を自宅とは別にしなければなりません。
※賃貸マンションの場合は使用承諾書が必要になるケースが多くなります。
◎営業所に配置しなければならない人
建設業の営業所として認められるには、以下の要件を満たしている必要があります。
✅専任技術者が常勤してること(営業所ごとに業種に応じて必要)
✅主たる営業所の場合は、経営業務の管理責任者が常勤していること
✅従たる営業所の場合は、その営業所の代表として支店長や営業所長が常勤していること
※本店と支店があって、本店に内装仕上工事業の専任技術者がいて許可を受けているけれど、支店には内装仕上工事業の専任技術者がいなくて許可を受けていない場合、支店では内装仕上の軽微な工事でも請け負うことができません。
※支店長や営業所長は令3条使用人として届出をしなければなりません。
建設業許可申請時における営業所の確認
許可申請時には営業所の要件を満たしているのか、許可行政庁によって書面で確認されることになります。
許可申請時での現地調査はありません(大阪府の場合)。
※ただし、許可通知書が営業所に届かず、許可行政庁に返送された場合は、現地調査が行われることがあります。
◎新規申請と許可換え新規申請の時のみ確認される
新規申請は基本的には初めて許可を取得するという場面なので、当然に営業所の要件を満たしているのか確認されます。
許可換え新規申請については、許可行政庁が変わる(国→都道府県、都道府県→国)ので、あらためて確認されるということです。
支店等を設置する場合は、支店ごとに営業所要件を満たしているのか確認されます。
◎申請時の必要書類
大阪府の場合、営業概要書という所定の台紙に必要事項を記載し、事務所の写真を貼って提出します。
場合によっては、賃貸借契約書や不動産登記簿謄本、使用承諾書等も必要になります。
最後に
以上、建設業許可の営業所について解説いたしました。
新規申請時はもちろん、支店等を新設する場合には追加で常時使用できる事務所を準備し、支店長と専任技術者を配置しなければなりません。
そして、届出手続きが必要になることも、場合によっては許可の区分が変わることもお伝えしました。
建設業法に定められた重要な要件の1つですので、正しく内容を理解し、漏れのないように手続きしましょう。
業務多忙で許可申請・変更手続きに時間を費やせない、許可要件をクリアできているのかどうか自信がない等、お悩みの方はぜひ専門家である行政書士にご相談いただければと思います。
この記事は行政書士が執筆・監修しています。 アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ) 本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。 行政書士の詳しいプロフィールはこちら |
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