工事経歴書は、その書類名称からどのようなことを記載する書類なのかは、なんとなくイメージできるかと思います。しかし、書類の重要性を理解し、ルール通り正しく記載できる方は意外に少ないと言えます。
建設業許可の申請書類の中では1番書き方がわかりにくく、間違いも多い書類といっても過言ではありません。
この記事を読むと、工事経歴書の書き方が完璧にわかります。
また、どのような場面で提出しなければならないのか、いかに重要な書類なのか、工事経歴書について詳しく知ることができます。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
1.工事経歴書は事業年度ごとに提出する重要書類
(1)新規許可等の申請のときに提出
(2)決算変更届の添付書類として提出
(3)経営事項審査の添付書類として提出
(1)建設業者の施工能力がわかる
(2)自社の状況がわかる
(3)将来的に実務経験の証明書類として使える
3.工事経歴書の書き方
(1)書き方の基本事項
(2)具体的な書き方(経営事項審査を受ける場合)
4.最後に
工事経歴書は事業年度ごとに提出する重要書類
建設業者が1年間にどのような工事を請け負ってきたのかがわかる書類です。
すべての工事が記載されているわけではありませんが、主要な工事の規模や内容、元請・下請の別などから全体像が見えてきます。建設業者の成績証明書のようなものといっても過言ではありません。
許可の申請をする時だけでなく、許可取得後の毎決算期の決算変更届、公共工事入札参加のための経営事項審査申請においても提出が求められます。建設業者にとって欠かせない書類の1つです。
◎新規許可等の申請のときに提出
更新申請の場合のみ提出が不要となります。許可を取得した建設業者は、毎年決算変更届のタイミングで提出が義務付けられており、更新を迎える時点で、その間漏れなく提出されていることが前提となっているからです。
もし、1期でも提出漏れがあると更新申請自体を受け付けてもらうことができません。
設立して間もない会社が許可申請する際に工事実績がないというケースはよくあります。この場合は「工事実績なし」と記載して提出します。実績がなくても提出を省略することができないということを押さえておきましょう。
(工事経歴書が必要な許可申請)
◎決算変更届の添付書類として提出
建設業許可を取得した事業者には、毎年決算終了後4ヵ月以内に決算変更届を提出することが義務付けられています。工事経歴書は決算変更届の添付書類の1つとして定められています。
許可を受けている業種すべてについて(工事実績がなくても)作成しなければなりません。
経営事項審査を受審するかしないかで作成ルールが大きく異なるという点に注意しましょう。決算変更届の表紙に経営事項審査の受審の有・無を記すようになっています。
(決算変更届の提出書類一覧)
◎経営事項審査申請の添付書類として提出
経営事項審査を受審する業種について提出が必要になります。基本的には決算変更届と同じものを用意することになります。受審する業種は工事実績がなくても「工事実績なし」と記載して提出しなければなりません。
工事経歴書が重要とされる理由
多くの場面で提出が義務付けられている書類だけあって工事経歴書はとても重要です。
重要とされる理由を3つに絞ってご紹介します。
■ 建設業者の施工能力がわかる
■ 自社の状況がわかる
■ 将来的に実務経験の証明書類として使える
◎建設業者の施工能力がわかる
工事経歴書をみると、業種ごとの1年間の工事請負金額(元請・下請それぞれ)、主要な工事の内容、配置技術者までわかります。その事業者の施工能力の物差しになります。
建設業許可関連の申請書類の中の閲覧可能書類の1つなので、各地方整備局・都道府県庁で誰でも閲覧することができます。当然ながらライバル会社や元請会社、信用調査会社等にも見られることになるのです。
◎自社の状況がわかる
第三者に施工能力がわかるということは、当然、自社の工事請負状況がわかるということでもあります。
1年間に請け負った主要工事の工期や配置技術者(主任技術者・監理技術者)を確認しながら、業種ごとに経営事項審査でいうとことろの技術職員(有資格者または実務経験者)の必要人数を検討し、社内体制の整備につなげていくこともできるでしょう。
配置技術者については、別記事で詳しく解説しているので、ぜひご参考にしてください。
◎将来的に実務経験の証明書類として使える
建設業許可申請において専任技術者を実務経験で証明する場合、在籍していた会社(証明会社)での工事請負契約書、注文書・請書、または請求書・入金確認書類を提示しなければなりません。
しかし、在籍していた会社(証明会社)が建設業許可を持っていた場合は、工事請負契約書等の代わりに毎年の決算変更届に添付している工事経歴書を必要年度分用意すれば、それが証明書類となります。
将来的に自社の中から実務経験による専任技術者を立てる可能性があるのであれば、毎年の工事経歴書を正しく作成しておくことが望ましいでしょう。
工事経歴書の書き方
経営事項審査を受審する場合は作成ルールがわかりにくいので特に注意しましょう。経営事項審査を受審しないのであれば、特に難しいルールはありません。
都道府県によってルールが異なることがあるので、大阪府以外で作成・提出する場合は事前に各都道府県に確認するようにしましょう。
◎書き方の基本事項
工事経歴書を作成する際の基本事項は以下のとおりです。
✅業種ごとに作成する
✅税込・税抜区分に印をつける
✅工事ごとに右から順に9つの記入欄が埋まっていることを確認する
✅合計金額を「直前3年間の各事業年度における工事施工金額」の金額と一致させる
✅工事実績がなくても「工事実績なし」と記載して提出する(省略不可)
✅経営事項審査を受ける場合は、工事実績の記載順序等の作成ルールに注意する
◎具体的な書き方(経営事項審査を受ける場合)
経営事項審査申請を受審する場合の書き方を解説します。
【事例(年間工事実績一覧)】
事業年度:令和2年9月1日~令和3年8月31日
このような工事実績の場合、以下のように記載します。
事前に元請・下請の別、公共工事・民間工事の別、工事内容、配置技術者、工期を一覧でまとめておく方が良いでしょう。
① まず、元請工事のみを請負金額の大きものから順に記載していきます。元請工事合計71,300千円の7割(49,910千円)に到達するところまで記載します。A、B、Cの3件で7割(49,910千円)を超えるので、そこで記載を一旦ストップします。
② ①に続けて、残りの元請工事と下請工事の中で請負金額の大きいものから順に全体完成工事高合計100,600千円の7割(70,420千円)に到達するところまで記載します。A、B、Cに続けて、D、Eの2件を記載すると7割(70,420千円)を超えるので、記載終了完成です。
経営事項審査を受けない場合は、元請・下請の区別なく、請負代金の大きい順に完成工事高全体の5割を超える程度まで記載すると良いでしょう。
特にルールはないので、軽微な工事がほとんどないようであれば、すべての工事を記載するのも良いかもしれません。
最後に
工事経歴書は、経営事項審査を受審する場合であれば、ルール通りの作成が義務付けられているので問題ありませんが、受審しない場合は特にルールがなく、決算変更届に添付する工事経歴書が適当に作成されている事がよくあります。
工事経歴書が重要とされる理由を考えると、作成ルールがないからこそ外部に何をどう見せたいのかを考え、それを反映させるべきだと思います。
建設業者にとって単なる提出書類ではないということを理解し、意味のある工事経歴書を作成することが望ましいでしょう。
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