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執筆者の写真Ryuji Kanemoto

公共工事は参入するべき?【入札参加のメリット・デメリット】

更新日:2023年6月11日


公共工事の入札は参加するべき?/経営事項審査も入札参加資格登録も必要

「公共工事は民間工事と違って提出書類とか決まり事とかが多くて大変そう」というネガティブイメージが先行して公共工事の入札参加を躊躇している建設業者の方はたくさんいらっしゃいます。

確かに工事施工にあたっての提出書類や決まり事が民間工事より多いのは間違いありません。さらに入札参加のスタートラインに立つまでに経営状況分析、経営事項審査、入札参加資格登録といった手続きも行わなければなりません。しかし、そういった大変なことばかりではなく、公共工事ならではの魅力もたくさんあります。

この記事を読むと、公共工事入札の概要と入札参加のメリット・デメリットがわかります。

正しく理解した上で、自社にとって必要なものかどうかの判断に役立てていただければと思います。


▼目次



公共工事とは?入札はどんなルールで行われているのか


公共工事が社会資本を整備するために国や都道府県が行っているものであるということは多くの方がご存じのことだと思います。しかし、入札の制度・仕組みまではあまり知られていないのかもしれません。

全体をざっくりと解説します。

 

■ 発注者は国・地方公共団体・独立行政法人等

■ 入札・契約制度の改革

■ 入札・契約制度の問題点/公表のタイミング

 

公正な競争のもと低価格で高品質な工事が行われるように、談合の排除やダンピング防止等を目的とした制度改革が行われてきて今に至ります。今もまだ問題点があり、様々な議論が進められています。


◎発注者は国・地方公共団体・独立行政法人等

公共工事とは、国、都道府県、指定都市、市区町村等が、主にインフラ整備を目的として発注する建設工事を指します。

国の機関が19団体、都道府県が47団体、指定都市が20団体、市区町村が1,721団体、独立行政法人等が125団体。

独立行政法人等とは、新関西国際空港株式会社や阪神高速道路株式会社、水資源機構などが該当します。

一般競争入札を導入しているところが多く、それぞれの工事入札情報が事前に公表されます。

建設工事全体に占める公共工事の比率は、都市部より地方が高く、都道府県によっては公共工事比率が約70%を占めているところもあります。


◎入札・契約制度の改革

指名競争入札には談合が行われやすいという問題があったので、一般競争入札が拡大しました。その結果、入札参加業者の低価格競争が目立つようになり、手抜き工事や下請けへのしわ寄せ、労働条件の悪化が懸念されるようになりました。

以降、ダンピング受注や談合の防止に向けて入札・契約制度の改革が進んでいます。

入契法(「公共工事入札契約適正化法」)と品確法(「公共工事の品質確保の促進に関する法律」)に基づいて、入札に係る様々な責務や制度が規定されています。


●発注者の公表義務

発注者は透明性を確保し、公正な競争を促進するため、工事発注の見通し、指名基準、入札に参加した会社、入札金額、入札結果、契約金額などを公開しなければなりません。


●総合評価落札方式

価格競争から価格と品質の競争へ転換させていくために、価格だけでなく、技術的能力も含めた総合的評価の結果に基づいて契約者を決定する方式です。

技術力や施工計画、施工能力、配置技術者の技術力、社会性・信頼性の項目ごとの評価を得点に換算し、入札価格で除して評価値を出します。

入札価格の低さではなく、総合評価値の高さで決まります。

市区町村では導入しているところ自体がまだ3割程度で、導入していても大阪市のように対象工事が予定価格6億円以上という風にすべての工事に摘要されているわけではありません。


●予定価格の適正な設定

発注者は、受注者が適正な利益を確保できるように、市場を反映した労務単価、施工の実態等をもとに積算することとされています。


●最低制限価格・低入札価格調査基準(ダンピング受注防止)

発注者は、過剰な価格競争を防ぐために、落札する価格のボーダーラインを設定することとされています。

最低制限価格は、参加者がそれ以下の価格で入札した場合に失格になります。低入札調査基準価格は、参加者がその価格を下回って入札した場合に、きちんとした工事ができるのかをチェックされます。金額算定根拠を説明できなければなりません。


(最低制限価格と低入札調査基準のイメージ)

公共工事入札 落札の方法

◎入札・契約制度の問題点/公表のタイミング

ダンピング受注を防ぐ目的で最低制限価格と低入札価格調査基準が導入されましたが、現在でもそれを事前公表している団体(1割にも満たない)があります。そうなると、きちんと積算せずにとりあえず最低制限価格と同額で入札する業者がでてきて、最終くじ引きで決まるということが起こります。結果、下請けにしわ寄せが行き、品質の低下にも繋がりかねません。

最低制限価格と低入札価格調査基準の事前公表をしている団体はごく少数ですが、予定価格を事前公表している団体が市区町村で4割程度あります。予定価格がわかれば、最低制限価格を推測するのもそれほど難しいことではありません。



公共工事入札の流れ 


公共工事入札のための準備・各種手続きは煩雑で、決算が終了したタイミングからはじまります。

数カ月以上先を見据えて行動しなければなりません。

経営事項審査まで終えると、後の流れは至ってシンプルです。

入札参加資格登録を済ませて案件ごとに入札という流れです。


◎まずは入札参加資格が必要 

公共工事の入札に参加するには、まず前提として建設業許可を取得しなければなりません。

以下のように入札参加登録まで完了して、はじめて入札に参加できます。

入札に参加したい自治体別に参加登録を済ませます。


【確定申告→決算変更届→経営状況分析→経営事項審査→入札参加登録(格付け決定)】

公共工事入札の流れイメージ

◎案件をみつけて入札する

入札参加登録先で格付け・業種をもとに入札に参加したい案件をみつけます。案件ごとに入札公告が出ているので工期や入札期限等をよく確認します。

入札参加したい案件が決まったら、電子入札システムから設計図書を入手し、期限までに積算し、入札書を提出します(電子入札には電子証明書とカードリーダーが必要です)。

最低制限価格制度、低入札価格調査基準制度、総合評価落札方式、適用されている制度に応じて入札した価格又は算出された評価値が1番であれば、落札となります。最低制限価格ギリギリのところを狙うイメージです。



公共工事入札に参加するメリット・デメリット


上記で見ていただいたように手続きの煩雑さが最大のデメリットかもしれません。

単なるデメリットと捉えるか、利益を得るための必要労力と捉えるかは置かれている状況によって異なると思います。

自社の成長・安定のために何が必要で何が不要かを客観的にみて判断いただければと思います。


◎入札参加のメリット3つ

公共工事の入札に参加して得れるメリットは大きく3つあります。


①売上高増、利益率UPも期待できる

大規模な工事を受注できる可能性があり、不況時でも一定の発注量が見込めることもあり、売上増が期待できます。

また、公共工事では積算基準や労務単価が設定されているので、民間工事のような過剰競争になりにくいので利益確保がしやすくなります。


②資金繰りの心配が少ない

工事によっては前受け金を受けれることもあり、資金繰りの面で安心できます。

さらに発注者が国や都道府県なので、貸し倒れのリスクもありません。


③対外的な信用度が上がる

工事の実績がついてくれば、金融機関や民間発注者の信用度が間違いなく上がります。

公共工事から派生して民間工事の受注機会も増えることにもつながります。


◎入札参加のデメリット2つ

公共工事の入札に伴うデメリットは大きく2つあります。


①入札参加資格までの手続きが煩雑

決算が終了した後の経営状況分析、経営事項審査、入札参加資格登録の手続きに労力がかかります。

また、経営状況分析を分析機関に依頼する手数料と経営事項審査の行政庁への審査手数料が必要になります。


②工事の施工時に作成・提出しなければならない書類は膨大

落札した後は契約関係書類からはじまり、民間工事では求められないような施工関係の書類等、最後には完成図書一式まで完成させ、竣工検査を受けなければなりません。


●契約時

工事請負契約書、その他関係書類


●契約直後

工程表、現場代理人等通知書(現場代理人・配置技術者)、その他関係書類

※公共工事においては現場常駐の現場代理人が必要です。配置技術者と兼務も可能です。


●工事開始時

施工体制台帳、施工体系図、下請負者通知書、施工計画書、その他関係書類


●工事期間中

実施工程表、工程表(週間・月間)、議事録、打合せ書、工事写真、安全管理に関する書類、その他関係書類


●工事完成時

完成図書、他


※竣工検査の日までに完成させなければなりません。

 

最後に


公共工事は入札から落札、竣工まで長期間にわたるものが多く、人員計画をはじめスケジュール管理が大変ですが、実績を積んでいくと、同じ発注者の関連案件を連続して受注できたり、事業の安定につながることは間違いないでしょう。

経営状況分析や経営事項審査といった手続きに自信がない方や対応する時間がない方は、入札参加資格登録の手続きまでは専門家である行政書士にすべて外注して、公共工事に参入してみてはいかがでしょうか。



この記事は行政書士が執筆・監修しています。

アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ)

本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。

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