建設業許可の更新時期が近づいてきた建設業者から「手続きが面倒」、「いつ頃から何の準備をしなければならないのか、よくわらない」といったご意見をよく伺います。
建設業許可は取得した後も、建設業法に基づいて課せられた義務を守り、許可要件を満たしている状態を維持し続けなければなりません。
それを前提に、あらためて許可業者に値するかの審査を受ける手続きが更新の手続きです。
更新手続きを忘れて、許可の有効期限を1日でも過ぎると、許可を失効することになります。
本記事では建設業許可の更新について、基本事項から必要書類まで詳しく解説しています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
1. 建設業許可更新の基本
(1)許可の有効期間は5年
(2)法定書類と添付書類
5.最後に
建設業許可更新の基本
建設業許可の更新に関する基本的なことは、新規で許可を取ったときに郵送されてくる許可通知書、その他添付資料に書かれています。必ず目を通しておきましょう。
◎許可の有効期間は5年
建設業許可の有効期間は、大臣許可・知事許可・一般許可・特定許可の区別に関係なく5年です。
許可取得日の5年後の前日まで有効です。
例えば、2020年3月3日許可取得の場合、2025年3月2日が満了日となります。
引き続き、建設業許可業者として営業を続けるのであれば、更新の手続きを行わなければなりません。
◎有効期間満了の30日前までに申請しなければならない
建設業許可更新の申請は、有効期間が満了する日の30日前までに行うこととされています。
許可が下りるまでの標準処理期間が30日なので、間を空けないようにする必要があるということです。
有効期間満了日の3ヵ月前から申請できるので、余裕を持って早めに手続きする方が良いでしょう。
もし、有効期間満了の日前30日を過ぎてしまった場合は、行政庁に事前相談が必要になります。
ただし、般特新規や業種追加にあわせて「許可の一本化(許可の有効期間の調整)」を行う場合は、必ず有効期間満了の日の30日前までに申請しなければなりません。
「許可の一本化(許可の有効期間の調整)」については以下のリンク記で詳しく解説しています。
更新申請を行った後、有効期間満了日までに更新の許可が下りないときは、許可が下りるまで引き続き、既存の許可が有効となります。
建設業許可の更新をする前に確認しておくべきこと
許可を取った後に許可要件を欠いてしまったり、届出義務等を怠っていた場合は、更新を受け付けてもらうことができません。
前回の許可から5年の間に、社内で何か変更があるような場合は注意が必要です。
届出義務を知らずに放置してしまっていることがよくあります。
◎許可要件を満たしていることが大前提
当然ながら、許可要件を満たしていなければ、更新することはできません。
念のため、各要件ごとに事前確認をしておく方が良いでしょう。
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
前回から経営業務管理責任者が代わっているが変更届を出していない、経営業務管理責任者が常勤ではなくなっている等の場合は、要件を満たしていないことになります。
役員等が5年の間に罰金刑を受けている等、欠格要件に関わることもあらためて確認する必要があります。
●専任技術者
前回から専任技術者が代わっているが変更届を出していない、専任技術者が常勤ではなくなっている等の場合は、要件を満たしていないことになります。
●財産的基礎
一般建設業許可の場合・・・継続して営業し、更新申請に至っている時点で要件を満たしていることになります。
特定建設業許可の場合・・・直前の決算で以下のすべてを満たしていなければなりません。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
●社会保険
適用事業所は加入が義務なので、更新のタイミングでも書類提出が必要です。
◎決算変更届をもれなく提出しているかどうか
毎年決算終了後4ヵ月以内に提出しなければならない決算変更届(建設業法財務諸表、工事経歴書など)の提出漏れが1期でもあると、更新申請を受け付けてもらえません。
万一、忘れている場合は先に提出しなければなりません。
提出忘れが何度も続くと、監督処分を受ける可能性もあるので注意が必要です。
◎各種変更届を期限通り提出しているかどうか
経営業務管理責任者の変更、専任技術者の変更、役員の変更、資本金の変更など重大な変更があった場合はそれぞれ決められた期限内に変更届を提出しなければなりません。
変更届の提出漏れがある場合は、更新申請を受け付けてもらえません。さかのぼって漏れがないか確認しておきましょう。
提出漏れがよく見られるのは、役員等(株主含む)の就任・退任があった場合の届出(30日以内)です。
登記だけ完了し、建設業法上の届出義務があるのを知らずに放置しているパターンが多く見られます。
建設業許可の更新に必要な書類
基本的には新規申請の時と比べて準備する書類が少なくなります。
特に経営業務の管理責任者や専任技術者の経験証明が容易になります。
◎許可要件を満たしていることを確認する書類
以下のとおり、許可要件を満たしていることを確認する書類が必要です。
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
・前回申請の副本の「常勤役員等(経営業務の管理責任者)証明書」
・常勤性の確認書類(健康保険被保険者証・標準報酬決定通知書など)
●専任技術者
・常勤性の確認書類(健康保険被保険者証・標準報酬決定通知書など)
●財産的基礎
・(特定建設業許可のみ)確定申告書類・決算報告書+建設業法財務諸表
●誠実性、欠格要件 ※提出書類
・身分証明書
・登記されていないことの証明書
●社会保険 ※提出書類
・標準報酬決定通知書
・労働保険概算・確定保険料申告書+領収済通知書
◎法定書類と添付書類
申請書類自体は少なくなりますが、記載箇所など異なるものがあるので注意が必要です。
「工事経歴書」、「直前3年の各事業年度における工事施工金額」、「財務諸表一式」あたりは、毎年の決算変更届に添付しているので、提出不要です。
建設業許可の更新に関してよくある質問
建設業許可の更新について頻繁にいただく質問をピックアップしました。
◎有効期間中に工事実績が全くなかった場合、更新はできないのでしょうか?
工事実績がなかったとしても更新することは可能です。
毎年の決算変更届で「工事実績なし」の工事経歴書を提出していることが前提になります。
持っている資格に対応する許可業種を取れるだけ取った場合によくあることです。
◎更新の手続きはいつからできますか?
更新は満了日の3ヶ月前から受付してもらうことができます。
満了日の30日前がリミットですが、早めの手続きを心がけるようにしましょう。
万一、満了日を1日でも過ぎた場合は更新できなくなります。
最後に
有効期間満了の直前まで更新のことを気にかけていない又は更新手続きは簡単にできると考えている建設業者が多いように思います。
更新は、簡単な手続きのように思われがちですが、引き続き許可を受けるということであり、確認書類も申請書類もきっちりと揃えなければなりません。
また、新規で許可を受ける時と同じように30日の審査期間もあります。
スムーズに更新手続きを進められるように、日頃から建設業法に基づく届出義務は漏れなく押さえておくようにしましょう。
場合によっては、毎年の決算変更届や経営事項審査も含めて行政書士との顧問契約を検討するのも良いかもしれません。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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