とび・土工工事業は建築工事、土木工事いずれの現場でも欠かせない主要な専門業種です。
一式工事を含めた全29業種の中で許可を取得している業者数が1番多い業種です。
請け負うことができる工事の幅が非常に広いのが特徴で、大小ありますが、常にどこかで需要があるといっても過言ではありません。
受注機会を逃さないためにも、とび・土工工事業の許可は取得しておきたいところです。
本記事では、とび・土工工事業の工事内容や許可取得の要件、必要書類などを詳しく解説しています。
これから新規でとび・土工工事業の許可を取りたい方は、ぜひご参考にしてください。
▼目次
(3)請負金額に関する注意点
(1)経営能力があること
(2)技術力があること
(3)財産的基礎があること
(5)営業所を有していること
(2)必要な申請書類の作成する
(3)行政庁窓口への申請する
5.最後に
とび・土工工事業の許可に関する基礎知識
とび・土工工事業の許可を取る上で知っておくべきことを3つ解説します。
■ とび・土工・コンクリート工事に該当する工事とは
■ とび・土工工事業の許可を取るメリット
■ 請負金額に関する注意点
とび・土工工事業の許可を取ると、どのような工事を請け負うことができるのか、どんなメリットがあるのか等、正しく理解しておきましょう。
◎とび・土工・コンクリート工事に該当する工事とは
とび・土工工事業の許可を取ると、500万円以上のとび・土工・コンクリート工事を請け負うことができます。
とび・土工・コンクリート工事とは、足場組み立て等、くい打ち等、掘削・盛上げ・締固め等、コンクリートによる工作物築造、その他基礎工事・準備的工事のことを指します。
具体的な工事例としては、とび工事、ひき工事、鉄骨組み立て工事、コンクリートブロック据え付け工事、くい打ち工事、掘削工事、盛土工事、コンクリート打設工事、プレストレストコンクリート工事、地すべり防止工事、吹付け工事、屋外広告物設置工事、外構工事、はつり工事など。
とび・土工工事業で請け負う工事は、よく他の業種で請け負う工事と混同されることがあるので、相違点がわかるように以下にまとめておきます。
とび・土工・コンクリート工事・・・『コンクリートブロック据付け工事』
・根固めブロック、消波ブロックの据付け等土木工事において規模の大きいコンクリートブロックの据付け
・あらかじめ造られた側溝、管、マンホール等コンクリート製品の設置
石工事・・・『コンクリートブロック積み(張り)工事』
・建築物の内外装としての擬石等はり付け
・法面処理
・擁壁としてコンクリートブロック設置、はり付け
タイル・れんが・ブロック工事・・・『コンクリートブロック積み(張り)工事』
・コンクリートブロックにより建築物を建設
とび・土工・コンクリート工事・・・『鉄骨組立工事』
・既に加工された鉄骨の現場組み立て
鋼構造物工事・・・『鉄骨工事』
・鉄骨の製作、加工から組立てまで
とび・土工・コンクリート工事・・・『プレストレストコンクリート工事』
・あらかじめ製作されたコンクリートの組み立て
土木一式工事・・・『プレストレストコンクリート工事』
・橋梁等の土木工作物を総合的に建設
とび・土工・コンクリート工事・・・『吹付け工事』
・法面処理のためのモルタル又は種子吹付け
左官工事・・・『吹付け工事』
・建築物に対するモルタル等の吹付け
とび・土工・コンクリート工事・・・『屋外広告物設置工事』
・あらかじめ製作された広告物の設置
鋼構造物工事・・・『屋外広告工事』
・屋外広告物の製作、加工、設置
とび・土工・コンクリート工事・・・『防水工事』
・トンネル防水工事等の土木系防水工事
防水工事・・・『防水工事』
・建築系の防水工事
◎「とび・土工工事業」の許可を取得するメリット
一般的なメリットは以下のとおりです。
✅取引先や金融機関など、対外的な信用度が上がる。
✅大規模な工事を受注できるようになる。
✅とび・土工・コンクリート工事で公共工事の入札参加が可能になる。(別途、経営事項審査の手続きは必要)
◎請負金額に関する注意点
請負金額500万円には消費税が含まれ、注文者が材料提供する場合は材料費と運送費も含まれます。
契約書や請求書を分割しても、実態として1つの工事であれば、当然に合計金額で見られます。
一般建設業許可の場合、元請として請け負った工事で、4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上を下請に発注することができません。
1次下請から2次下請への発注金額には制限がありません。
※請負金額自体には制限がありません。
とび・土工工事業の許可を取るための要件
とび・土工工事業の許可要件5つを解説します。
■ 経営能力があること
■ 技術力があること
■ 財産的基礎があること
■ 欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
■ 営業所を有していること
許可要件を一つずつ入念に確認していきましょう。
特に常勤役員等(経営業務の管理責任者)と専任技術者は重要な要件であり、建設業許可制度の要です。
◎経営能力があること
●常勤役員等(経営業務管理責任者)
法人であれば役員、個人事業主であればその本人に、建設業での経営経験が5年以上必要です。
建設業での経営経験とは、建設会社の役員等または建設業を営む個人事業主としての経験のことをいいます。
他にも要件を満たす方法はありますが、認められないケースも多く、難易度が上がります。
以下のリンク記事で詳しく解説しています。
●社会保険への加入
法律上加入義務のある保険に正しく加入していることが求められます。
健康保険・厚生年金保険・・・法人または従業員5人以上の個人事業主は適用事業所
雇用保険・・・法人・個人事業主関係なく、1人でも雇用していれば適用事業所
◎技術力があること
●専任技術者
とび・土工工事業の専任技術者になり得る国家資格を保有している人か、とび・土工・コンクリート工事の一定以上の実務経験がある人を営業所ごとに専任の技術者として配置しなければなりません。
専任技術者のさらに詳しい解説は以下のリンク記事でご確認ください。
【とび・土工工事業の専任技術者になり得る国家資格】
・1級建設機械施工管理技士
・2級建設機械施工管理技士
・1級土木施工管理技士
・1級土木施工管理技士補+実務経験3年
・2級土木施工管理技士(土木・薬液注入)
・2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装)+実務経験5年
・2級土木施工管理技士補+実務経験5年
・1級建築施工管理技士
・1級建築施工管理技士補+実務経験3年
・2級建築施工管理技士(躯体)
・2級建築施工管理技士(建築)+実務経験5年
・2級建築施工管理技士(仕上げ)+実務経験5年
・2級建築施工管理技士補+実務経験5年
・1級造園施工管理技士+実務経験3年
・1級造園施工管理技士補+実務経験3年
・2級造園施工管理技士+実務経験5年
・2級造園施工管理技士補+実務経験5年
・技術士(建設部門、総合技術監理部門「建設」)
・技術士(農業部門「農業土木、農業農村工学」、総合技術監理部門「農業:農業土木、農業農村工学」)
・技術士(水産部門「水産土木」、総合技術管理部門「水産:水産土木」)
・技術士(森林部門「森林土木」、総合技術管理部門「森林:森林土木」)
・技能検定「型枠施工1級・2級」
・技能検定「とび・とび工1級・2級」
・技能検定「コンクリート圧送施工1級・2級」
・技能検定「ウェルポイント施工1級・2級」
・地すべり防止工事士
・基礎施工士(基礎ぐい工事)
※1級(建設機械、土木、建築)または技術士は特定建設業許可においても専任技術者になることができます。
※技能検定2級の場合は、合格後3年以上の実務経験が必要です。
※地すべり防止工事士の場合は、合格後1年以上の実務経験が必要です。
【一定以上の実務経験】
実務経験とは、とび・土工・コンクリート工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
ただ単にとび・土工・コンクリート工事の雑務のみ行っていた場合は経験として認められません。
設計技術者や現場監督や土工及びその見習いの経験等は認められます。
原則10年以上の経験が求められます。
>実務経験期間の短縮
以下の指定学科を大学で修了した人は実務経験3年、高校で修了した人は実務経験5年に短縮できます。
〈指定学科〉
土木工学又は建築学に関する学科
■ 一般建設業…上記国家資格のいずれか又は10年以上の実務経験 ■ 特定建設業…上記の1級相当国家資格又は一般建設業要件クリア+2年以上の指導監督的実務経験 |
指導監督的実務経験については、以下のリンク記事で詳しく解説しています。ぜひご参考にしてください。
◎財産的基礎があること
>一般建設業許可の場合
直前の決算で純資産合計が500万円以上あることが求められます。
なければ、500万円以上の預金残高(資金)で金銭的信用があることを証明します。
>特定建設業許可の場合
直前の決算期の財務諸表において以下のすべてをクリアしていることが求められます。
✅欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと。
✅流動比率が75%以上であること。
✅資本金の額が2,000万円以上であること。
✅自己資本の額が4,000万円以上であること。
財産要件について下記リンク記事で詳しく解説しています。ぜひご参考にしていただければと思います。
◎欠格要件に該当していないこと、誠実性があること
法人では役員や執行役、相談役、顧問、個人株主(議決権5%以上)など、個人事業主はその本人が欠格要件に該当していると、許可されません。
請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがある場合も許可されません。
>許可制度の本質から当然に要求されること
✅申請書類や添付書類の中の重要な事項について、虚偽の記載もしくは欠落があるとき
>法人の役員等や個人事業主の欠格事由
✅破産者で復権を得ない者
✅建設業許可の取消を受けて5年を経過しない者
✅監督処分による許可取消を免れるために廃業届を提出してから5年を経過しない者
✅営業停止処分を受け、その停止期間が経過しない者
✅禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
✅一定の法令の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
✅暴力団員等に事業活動を支配されている者
✅暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
✅精神の機能の障害により建設業を適正に営む事ができない者
欠格要件、誠実性について以下のリンク記事で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
◎営業所を有していること
建設業の営業を行う事務所(=建設工事に係る請負契約を締結するなど、見積り、入札、契約締結に係る実体的な行為を行う事務所)を主たる営業所として設ける必要があります。
従たる営業所(支店)を設ける場合は、その営業所に支店長や専任技術者を配置しなければなりません。
従たる営業所(支店)が主たる営業所と異なる都道府県にある場合は、国土交通大臣の許可になるのでご注意ください。
営業所の要件は以下のとおりです。
✅営業所として常時使用する権限を有していること。
✅建物の外観または入口で、商号または名称が確認できること。
✅固定電話、事務機器、机等什器備品を備えていること。
✅許可取得後は、建設業の許可票を掲示していること。
✅経営業務の管理責任者(従たる営業所は支店長等)、専任技術者が常勤して専らその職務に従事していること。
営業所について以下リンク記事で詳しく解説しています。ぜひご参考にしていただければと思います。
とび・土工工事業の許可を取るための具体的な申請手続き
とび・土工工事業許可の具体的な申請手続きについて解説します。
■ 許可要件の証明書類を揃える
■ 必要な申請書類を作成する
■ 行政庁窓口に提出する
所定の申請書類を作成して提出するだけではなく、許可要件を満たしていることを証明できる書類を準備しなければなりません。
証明書類は都道府県によって判断が異なるものがあるので、事前に手引き等を確認しましょう。
◎許可要件の証明書類を揃える
常勤役員等(経営業務管理責任者)の経営経験5年以上を証明する確認書類、専任技術者の国家資格を証する書面または実務経験を証明する確認書類、財産的基礎を証明する財務諸表や残高証明書など、各要件を満たしていることを客観的に証明できる書類を準備します。
◎必要な申請書類の作成
新規・業種追加・般特新規、申請パターンに応じて必要申請書類を作成します。
法人・個人で差がありますが、新規の場合はおよそ20種類ほどの書類が必要です。
◎行政庁窓口に提出する
申請書類は正本1部と副本1部を提出します。
都道府県によって書類の綴じ方が異なりますのでご注意ください。
申請にかかる費用については、知事許可は申請手数料として9万円(新規)、大臣許可は登録免許税として15万円(新規)が必要となります。
業種追加の場合は、知事許可、大臣許可いずれも5万円。行政書士に依頼した場合は、別途、報酬額が必要になります。
申請受付窓口は大臣許可と知事許可で異なります。
複数都道府県に跨って営業所を置き、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、滋賀県、京都府、福井県に主たる営業所を置く場合は、近畿地方整備局(大阪市中央区)が窓口になります。
大阪府のみに営業所を置く場合は、大阪府知事許可を受けることになり、大阪府咲州庁舎(大阪市住之江区)が窓口になります。
(知事許可/申請窓口)
(大臣許可/申請窓口)
とび・土工工事業の許可に関してよくある質問
とび・土工工事業の許可を取るにあたって頻繁にいただく質問をピックアップしました。
Q.とび・土工工事業の専任技術者になりたいのですが、10年以上の実務経験を証明する書類を揃えることができません。なにか方法はないでしょうか?
注文書・請書の控えが取引先に残っているか、ダメ元で聞いてみるのもありでしょう。
何年も前のものが残っている可能性は低いでしょうし、関係性にもよりますが、頼みづらいかもしれません。
資格取得は手っ取り早いのですが、ハードルが高くなるので、「登録土工基幹技能者」の技能講習を受けるというのが1番おすすめです。
600分の講習を受け、修了テストに合格すると、とび・土工工事業の専任技術者になることができます。
講習受講の要件はそれほど難しくありません。
(一般社団法人)日本機械土工協会のHPで詳細をご確認ください。一般社団法人 日本機械土工協会 (jemca.jp)
Q.重量屋なのですが、とび・土工工事業と機械器具設置工事業のどちらの許可を取ればよいのでしょうか?
一般的に重量屋は重量物を運搬して設置するとび・土工工事業に該当します。
大きな機械を運搬・設置することも多いので、機械器具設置工事業と区別がつきにくいのかもしれません。
機械器具設置工事業は機械器具の組立てや取付け等を伴う工事を行います。
エレベーター、エスカレーターといった運搬機器やプラント設備、ポンプ設備等、特殊なものを扱います。
既成の器具を運んでアンカー、ボルトで取り付ける程度であれば、とび・土工工事業の許可を取るべきでしょう。
最後に
以上、とび・土工工事業の建設業許可を取る上で重要なポイントを解説いたしました。
特に経営能力(経営業務管理責任者)と技術力(専任技術者)の要件は、高いハードルに感じるのではないでしょうか。
実際の申請現場ではイレギュラーなことがよく起こります。
要件を満たしていると喜んだのもつかの間、それを証明する書類がわずかに不足し、許可取得を断念するケースも出てきます。
とび・土工工事業の許可要件を満たしているのかどうか、証明書類が揃っているのかどうか、不安な方は一度、専門家に相談してみてください。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。 建設業専門の事務所として 近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
当事務所では建設業許可の申請代理を承っております。
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