解体業を営むためには解体工事業の登録が必要だということは広く知られています。
独立開業して解体業をはじめる個人事業主が、開業と同時に登録申請するケースがよく見られます。
建設業の許可とは別の手続きで、他の業種にはないことです。
「登録の要件(条件)や具体的な申請方法が知りたい」
開業直前にあわてて調べている方も多いのではないでしょうか。
本記事では解体工事業登録のことがよくわかるように、概要から申請書類のことまで詳しく解説しています。
ぜひご参考にしていただければと思います。
▼目次
(2)登録の要件(条件)は2つ
(1)提出書類・提示書類
(2)提出書類の書き方
(1)変更の届出
(2)廃業・抹消の届出
5.最後に
解体工事業の登録とは
請負金額が500万円未満の工事であれば、特に何の手続きも行わず、建設業を営むことができます。
しかし、これは建設業法に関わる話であって、解体業の場合は「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)」の適用を受けるため、500万円未満の工事であっても解体工事業の登録が必要になります。
◎解体工事業登録と建設業許可の関係
建設リサイクル法は廃棄物の再資源化を促進し、最終処分量を抑制することを目的としています。
多くの廃棄物を排出する解体工事は、適正な工事が求められ、登録制度をはじめとするさまざまな義務が課せられています。
土木工事業、建築工事業、解体工事業の建設業許可を受けている場合は、みなし登録業者という扱いになります。
解体工事業登録の必要がないということです。
もちろん、土木工事業、建築工事業の許可では、500万円以上の解体工事を請け負うことはできません。
◎解体工事に該当するかどうかの区分はわかりづらい
解体工事業の登録、解体工事業の許可が必要ということは、当然ながら請け負う工事が解体工事に該当するということです。
なぜこんなに当たり前のことを言うかというと、解体工事に該当するかどうかの判断基準が非常にわかりづらいのです。
建設業許可事務ガイドラインでは以下のように定められています。
“それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当する。総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ『土木一式工事』や『建築一式工事』に該当する。”
電気工事、管工事などの各専門工事によって出来上がった目的物を解体する工事は、各専門工事に該当します。解体工事業の登録も許可も不要ということです。
元請として建物の解体から新築までを総合的に行う場合は、解体工事が建築一式工事の中の専門工事の1つとして扱われます。元請の立場からすると解体工事業の登録も許可も不要ということになります。
家屋の解体、商業テナントやオフィスの内装解体等は解体工事に該当します。
登録申請手続きの概要
解体工事業の登録はどこに申請するのか、どんな登録条件なのか、登録申請手続きの概要について解説します。
■登録申請は工事を行う区域ごとに必要
■登録の要件(条件)は2つ
建設業許可に比べると求められる条件はそれほど難しいものではありません。
◎登録申請は工事を行う区域ごとに必要
建設業許可は営業所のある区域の都道府県知事に申請し、許可を受けます。
工事自体は日本全国どこでもできます。
一方、解体工事業登録は工事を行う区域の都道府県知事に申請し、登録を受けなければなりません。
都道府県知事の登録を受けていない区域では工事を行うことができません。
工事現場が複数都道府県にわたる場合は、それぞれの都道府県知事から登録を受ける必要があります。
建設業許可(土木、建築、解体)を受けている「みなし登録業者」は、日本全国で工事が可能です。
◎登録の要件(条件)は2つ
①「技術管理者」を配置すること
技術管理者とは施工現場で技術上の管理を行う責任者のことを言います。
建設業許可の経営業務の管理責任者や専任技術者と兼務することはできません。
技術管理者の資格要件は以下のとおりです。
【有資格者】
・1級建設機械施工管理技士
・2級建設機械施工管理技士(「第1種」、「第2種」)
・1級土木施工管理技士
・2級土木施工管理技士(「土木」)
・1級建築施工管理技士
・2級建築施工管理技士(「建築」、「躯体」)
・技術士(「建設部門」)
・1級建築士
・2級建築士
・1級とび+とび工
・2級とび+解体工事実務経験1年
・2級とび工+解体工事実務経験1年
・解体工事施工技士試験合格者
【実務経験者】
一定の学科を履修した大学・高専卒…2年(講習受講者1年)
一定の学科を履修した高校卒…4年(講習受講者3年)
その他…8年(講習受講者7年)
※講習とは解体工事施工技術講習のこと
②欠格要件に該当していないこと
以下のいずれかに該当するとき、又は申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、登録を受けることができません。
1.解体工事業の登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者
2.解体工事業者で法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30 日以内にその解体工事業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの
3.解体工事業の事業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
4.建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)又はこの法律に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
5.暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者(9で暴力団員等という)
6. 解体工事業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号のいずれかに該当するもの
7.法人でその役員のうちに1から5までのいずれかに該当する者があるもの
8.技術管理者を選任していない者
9.暴力団員等が支配する者
登録申請に必要な書類
必要な書類は建設業許可ほど多くありません。
法定様式をはじめとする提出書類、技術管理者や営業所に関する提示書類を漏れなく準備するようにしましょう。
提出書類は正本・副本の各一部が必要です。
(登録手数料:新規33,000円、更新26,000円)
◎提出書類・提示書類
【提出書類】
①解体工事業申請書(規則様式第1号)
②誓約書(規則様式第2号)
③技術管理者の資格要件を証明する書類
・実務経験証明書(規則様式第3号)
・卒業証書・卒業証明書の写し(該当する場合)
・資格免状等(該当する場合)
④登録申請者の調書(規則様式第4号)
⑤申請者の所在確認書類
・会社謄本(法人の場合)
・住民票(個人の場合)
【提示書類】
①技術管理者の在籍確認書類
・健康保険証の写し
・雇用保険証の写し
・直近3か月分の給与台帳
※代表者が技術管理者の場合は不要
②営業所の所在地確認書類
・賃貸契約書の写し(賃貸の場合)
・建物登記簿謄本(自己所有の場合)
※会社謄本どおりの営業所所在地であれば不要
※住民票の住所が営業所所在地であれば不要
③解体工事業登録通知書(更新申請の場合)
④本人確認書類
◎提出書類の書き方
・解体工事業登録申請書(表面)
・解体工事業登録申請書(裏面)
・誓約書
・実務経験証明書
・登録申請者の調書
登録後に必要な届出
解体工事業の登録の有効期間は5年間で、5年ごとに更新が必要です。
有効期間中、登録上重要な事項に変更が生じた場合は変更の届出をしなければなりません。
また、廃業する場合、建設業許可(土木、建築、解体)を取得した場合も届出が必要です。
◎変更の届出
変更のあった日から30日以内に「解体工事業登録事項変更届出書(規則様式第6号)」を提出しなければなりません。届出事由に応じて添付書類も必要になります。
・解体工事業登録事項変更届出書
◎廃業・抹消の届出
廃業のあった日、抹消のあった日から30日以内にそれぞれ「解体工事業廃止等届出書(府規則様式第4号)」、「建設業許可取得通知書」を提出しなければなりません。
抹消というのは建設業許可(土木、建築、解体)を取得したことで「みなし登録業者」に変更するためのものです。
以下のとおり、廃業・抹消の事由に応じて添付書類も必要になります。
・解体工事業廃止等届出書
・建設業許可取得通知書
最後に
解体工事業の登録はそれほど難しい申請ではないので、自身でされる方が多いかもしれません。
本記事の書類の書き方等をぜひご参考にしていただければと思います。
複数の都道府県で登録が必要な場合や産業廃棄物収集運搬許可もあわせて必要な場合は、効率化を図るためにも専門の行政書士事務所に相談した方が良いでしょう。
この記事の執筆者 金本 龍二(かねもと りゅうじ)|行政書士 アールエム行政書士事務所の代表・行政書士。事業会社で店舗開発に従事。ディベロッパーや建設業者との契約交渉・工事発注に数多く携わる。その後、行政書士事務所を開設。建設業専門の事務所として近畿圏内の知事許可、大臣許可、経営事項審査、建設キャリアアップシステムをサポート。 |
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