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執筆者の写真Ryuji Kanemoto

【建設業許可】よくある勘違い9選|常用工事はNG?決算変更届いつから?

更新日:4月9日


常用工事は実務経験にカウントOK?よくある勘違い

建設業は建設業法や他関連法により、厳しい要件・ルールが求められる傾向にあります。

業種の区分や実務経験の基準、請負金額の考え方等、解釈・判断が難しいものもたくさんあります。


その中でも特によく勘違いされる9つについて本記事で解説しています。

単なる勘違いでは済まされず、違法になるものもあるので注意しましょう。



▼目次



建設業許可でお困りの方はこちら


許可業種に関する勘違い


許可業種に関しては業種ごとの要件や請け負う工事がどの業種に該当するか等、正確に把握するのが難しく、勘違いも多いところです。


【1】建築一式工事の許可があれば、他の建築系専門工事をすべてカバーできる

「建築工事業(建築一式工事)」はその名称から、「内装仕上工事業」や「屋根工事業」等、建築系の業種すべてをカバーできるかのように思えます。ある意味正解ですが、正確には間違いです。


建築工事業は、原則、元請の立場で一式工事として請け負い、基礎から屋根まで家一軒を建てる(増・改築も含む)ことができる許可業種の1つです。一式工事の内容には他の専門工事が含まれていますが、「建築工事業(建築一式工事)」の許可があればすべてをまとめて請け負うことができます。


一方で、専門工事を単体で請け負う場合は、それぞれの業種の許可が必要になるのです。

工事名が「○○新築工事」となっていても、実態は下請工事で内装仕上のみ行う場合は「内装仕上工事業」の許可が必要ということになります。


【2】電気工事業の許可を取ったら500万円以上の電気工事を請け負い、施工することができる

電気工事は電気工事士法・電気工事業法といった他の法律の適用を受けるので、注意が必要です。


請け負った工事を自社施工する場合は、電気工事業法に基づき、都道府県知事又は経済産業大臣の登録(電気工事登録等)を受けなければなりません。

また、電気工事士法にある通り、原則、電気工事士の資格を持つ人が施工しなければなりません。


建設業許可は、あくまでも建設業法のもと500万円以上の電気工事を請け負うことが可能になるというものです。

許可を取得したからといって、施工までできるようになるわけではないのです。


元請として請け負い、施工管理のみ行い、工事自体は下請にさせるのであれば登録の必要はありません。

他にも電気工事登録には難しい論点がたくさんあるので、別記事にて詳しく解説しています。

ぜひご参考にしていただければと思います。



経営経験や実務経験に関する勘違い


建設業許可を取得する上で経営経験と実務経験は、非常に重要なポイントになります。同時に勘違いも多く見られるところです。判断基準が都道府県によって異なることも一因かもしれません。


【1】過去に建設会社で5年以上取締役をしていたので、経営経験として認められる

過去、取締役として登記されていた期間と同期間の建設業の営業実績が確認できれば、経営経験として認められます。


ただし、非常勤の場合は経営経験としてカウントされません。

5年以上取締役をしていたといっても非常勤の立場では意味がないということです。

申請時に対象期間の確定申告書類も提示するので、常勤であったか非常勤であったかがわかります。


これはあくまでも大阪府の事例で、都道府県によっては非常勤の期間でも経営経験として認められる場合があります。


【2】常用工事(人工出し)も経営経験や実務経験としてカウントできる

人工出しは労働者派遣にあたります。派遣元の会社が雇用している労働者を派遣先の会社の指揮命令のもと働かせるというものです。


これは建設業では禁止されています(施工管理や現場事務等、一部の業務は除く)。


建設業では請負が前提とされています。請負とは、請負事業者が注文者と工事の完成を約束し、請負事業者が雇用している労働者を、請負事業者の指揮命令のもと建設現場で働かせるというものです。


ですので、人工出しは建設業における工事実績として認められず、結果的に経営業務の管理責任者の経営経験、専任技術者の実務経験として認められることはありません。


しかし、これも都道府県によって判断が異なります。大阪府以外では専任技術者の実務経験としては認められることがあるようです。



請負金額に関する勘違い


請負金額に上限があるのか、どこまでが請負金額に含まれるのか等、正しく判断しなければ、事業運営に支障をきたすことにもなりかねません。


【1】一般建設業のままでは大きな工事を請け負うことができない

大規模な工事を請け負う可能性があるからということで、特定建設業への変更(般特新規申請)のご相談を受けることがよくあります。


しかし、詳しく話を聞いてみると、必ずしも特定建設業許可に変更する必要がないことが多いです。

一般建設業許可のままでも制限なく大規模な工事を請け負うこと自体はできるのです。


1件の工事について元請として下請に4,500万円以上(建築一式は7,000万円以上)の発注を行う場合のみ特定建設業許可が必要となります。


あくまで元請として請け負うことが前提です。下請として請け負う場合は、請負金額や再下請への発注金額がどれだけ大きくても一般建設業許可で問題ありません。


公共工事においては工事が一定規模以上になると、下請への発注金額に関係なく、入札参加資格として特定建設業許可を求められることが多いです。


特定建設業許可については別記事で詳しく解説しているので、ご確認ください。


【2】材料費を除くと請負金額が500万円未満なので建設業許可はいらない

材料費や運送費は請負金額に含まれ、合計で税込500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)であれば、建設業許可が必要になります。


特に注文者から材料の提供がある場合は、その材料費は請負金額に含まれないかのように思えますが、そうではありません。また、機械器具設置工事のように組立て・据付けする機械自体が高額な場合等も、そもそもそれが材料とは考えにくいのかもしれません。



その他建設業許可事務手続きに関する勘違い


建設業許可は取得する時はもちろん、取得した後にも様々な事務処理があります。

外部に提出する書類や閲覧制度で第三者が見ることができる書類も多いので、誤りのないよう注意したいことろです。


【1】建設業許可通知書をなくした場合は再発行

建設業許可を取得すると「許可通知書」が発行されます。事業者名・代表者名・許可番号・許可年月日・許可有効期限・許可業種が記載されています。この「許可通知書」は再発行ができません。様々な場面で提出を求められることがあるので、紛失しないように大切に保管しておかなければなりません。


しかし、万一紛失した場合は「許可証明書」で大抵代用することができます。

「許可証明書」は建設業許可が現在有効であることを証明する書類です。1通500円で発行してもらうことができます(大阪府の場合)。


「許可通知書」の方は、許可有効期間中に商号や代表者等の変更があっても都度発行されることはありませんが、「許可証明書」には常に最新の情報が記載されます。

むしろ「許可証明書」の方を求められることが多いかもしれません。


【2】許可業種以外の売上はすべて「その他工事」に計上

建設業許可申請や決算変更届において提出する書類「直前3年の各事業年度における工事施工金額」で許可業種(取得予定も含む)以外の業種の実績は「その他工事」に入れることになります。しかし、なんでも「その他工事」に入れていいわけではありません。あくまでも建設業許可の業種に分類される工事の実績が対象です。


よくある勘違いとしては、工事にあたらないものまで「その他工事」に入れているケースです。例えば、設備管理や設備点検、設計、人工出し等です。これらはそもそも工事には分類されず、「その他工事」ではなく、兼業売上ということになります。


他にも許可業種以外の工事をその他工事に入れず、適当に許可業種の中に混ぜ込んだりしているケースもよく見られます。


「その他工事」への振り分けを正しく行っていないと、専任技術者の実務経験の証明が難しくなったり、許可を取得する業種選択に問題があると周りから思われたり、様々な弊害が生じることがあるので注意が必要です。


【3】決算変更届は許可を取った後はじめての決算から提出する

建設業許可業者になると、決算から4ヵ月以内に決算変更届を提出することが義務付けられています。

では、許可を申請・取得するタイミングが決算終了直後だった場合はどうでしょうか。


例えば、2022年12月期決算を迎えた会社が2023年1月に建設業許可を新規申請する場合、2023年2月頃に許可を取得できたとして、そのすぐ後の2023年4月末までに決算変更届を提出する義務があるのか。それとも許可取得後はじめて迎える決算(2023年12月期)に合わせて2024年4月末までに決算変更届を提出すればよいのか。


答えは「2022年12月末決算の決算変更届を2023年4月末までに提出しなければならない」です。


許可を申請するタイミングで確定申告を終えていないので、申請書類として、財務諸表も納税証明書も2021年12月期のものを提出することになります。1番直近の実績が申告されていない状況なので、許可取得後すぐに2022年12月期の決算変更届を提出しなければならないということになるのです。

 

最後に


建設業許可の許可業種、経営経験・実務経験、請負金額、事務手続きについて9つピックアップしてご紹介しましたが、本当によく勘違いされるところなので注意してください。

該当する法令の条文や各都道府県の手引きをよく確認すれば判断できることですが、個別具体的な事例から最終判断するのは難しいかもしれません。

自信のない方は建設業専門の行政書士事務所か、直接各都道府県に問い合わせるようにしてください。



この記事は行政書士が執筆・監修しています。

アールエム行政書士事務所/代表/金本 龍二(かねもと りゅうじ)

本記事は建設業に特化した事務所の行政書士が執筆・監修しています。

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